何をやっても上手くいかない日が随分と長く続いている。
そうゆう時に限って、今更考えてもどうにもならない事ばかりを思い返す。
「幸福」が来たら、躊躇わず前髪をつかめ、うしろは禿げているからね。
レオナルド・ダ・ヴィンチの手記での一文だ。
この文章に少し解釈と表現を加えてみようと思う。
「幸福」が来たみたいだから前髪を掴んでみたら、血相を変えて怒号を浴びせられた。
そいつの後ろを見ると、真っ黒なウェディングドレスのレースのように、後ろ髪がどこまでも伸びている。
僕が掴んだのは「後悔」だった。
誰でも何かしら覚えはあるはずだ。
大体の人は自分の中での「幸福」の顔すら知らない。
僕もその一人で、これがまさに「幸福」だと思って前髪を掴んでみては、「後悔」だったという連続。
同じ轍は踏まないと思ってすれ違う時に限って、そいつの後ろ髪が禿げてたりする。
何一つ上手くいかない。
腹いせにそのテカテカの後頭部をペシャリと引っ叩きたくなる。
それでも掴まないことには始まらないので、嫌々でも引っ張り続けてやろうと決めた。
僕は今から三回、僕にとっての「幸福」だと思われる奴の前髪を掴もうと思う。
それはもう、引きちぎる勢いで、思いっきり掴んで引っ張ってやろうと思う。
それが悉く「後悔」だったら、何回も掴んだ好みとして、前髪を掴んだまんま居酒屋に行って一緒に飲んでやろうと思う。